[SVJ 72] 分散・多様性

Akira Tsurukame akisan @ earthlink.net
2022年 1月 24日 (月) 07:50:52 JST


豊島さん

昨日はズームでお話を聴けて嬉しいでした。
豊島さんの「横串、メタ空間、アメーバ的」
という言葉に共感しました。日本人や日本
社会が持つ潜在的な豊かさや力を発揮する
ためには組織より個が生きる、アメーバ的
な結び付きが大切だと思います。

今日朝日ドットコムの記事を読んでいたら、
集団統一的なモデルから分散的かつ多様性
のあるモデルを予測するAIの話があり、と
ても面白く思いましたので、ひょっとした
らすでにお読みかも知れませんが、念のた
め、豊島さんにお送りさせて頂きます。長
文、すみません。

鶴亀彰



  AIが予測した2050年 昭和の人生モデルから脱却のすすめ

  *


写真・図版1972年、東京・新宿駅。画一的な「人生モデル」が理想とされた昭和の時代、超満員の客を駅員が電車に押し込む風景は日常だった 
<https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20220117002773.html>

  * 写真・図版
    <https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20220117002771.html>
  * 写真・図版
    <https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20220117002770.html>
  * 写真・図版
    <https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20220121000033.html>

 コロナ禍の始まりから2年。先行きが不透明な中、人々の不安を映すように、業界やテクノロジーの未来を予測する本が売れています。

 未来予測は学術研究としても行われています。京都大「こころの未来研究センター」の広井良典 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E5%BA%83%E4%BA%95%E8%89%AF%E5%85%B8.html>教授は、人工知能 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E7%9F%A5%E8%83%BD%EF%BC%88%EF%BC%A1%EF%BC%A9%EF%BC%89.html>(AI)を使って2050年を予測しました。日本社会が30年後も持続可能であるためには、何が必要か。AIが出した答えは――。


    2万通りの未来

 ――どんな予測をおこなったのですか。

 将棋の藤井聡太 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E8%97%A4%E4%BA%95%E8%81%A1%E5%A4%AA.html>さんが数十手先を読む姿を想像してください。どのコマを動かすかで、勝負のシナリオはいくつも枝分かれしていくと思います。

 わたしの研究グループが行ったシミュレーションはそれに近いです。2050年までに日本社会はどう変化していくか。変化のシナリオを予測しました。人口減少 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E4%BA%BA%E5%8F%A3%E6%B8%9B%E5%B0%91.html>が改善する場合、農業が衰退する場合、幸福度が上がる場合など、シナリオは2020年を出発点に無数に枝分かれし、2万通りの未来が示されました。

コロナ禍によって、職場でも、家でも、デジタル化が一気に進みました。技術革新は、私たちの生活を幸せにするのか。そのためには何が必要なのか。第一線の研究者たちの論考をお届けします。

 ――どんな結果が出ましたか。

 日本社会が30年後も持続可能であるためには「分散」が重要だということが見えてきました。

 ――どういうことでしょうか。

*ここから続き*

 人口や雇用、幸福度などを改善させるためには、サテライトオフィスの数を増やしたり副業 
<https://www.asahi.com/special/matome/fukugyojidai/>をしやすくしたりする必要がある、という結果でした。

 一つの企業や場所にとらわれずに分散し、多様な働き方や住まい方を認め合っていくこと。そうすれば、失業率や出生率が改善すると示されました。女性の雇用の待遇を改善したり、男性の育児休業 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E8%82%B2%E5%85%90%E4%BC%91%E6%A5%AD.html>取得率を上げたりすることも有効とされました。

 ――コロナ前のシミュレーションから変化はありましたか。

 コロナ前のシミュレーションは2017年に公表しました。実はそこでも「分散」が重要だという結果が出ました。

 ただそれは、いわば空間的な分散でした。東京への一極集中が緩和され、地方への分散が進んだほうが、望ましい社会になる、という内容です。

 コロナ後のシミュレーションは、空間的な分散にとどまらず、人生のあらゆる面を分散させる、包括的な分散が重要だとする結果でした。


    古いモデルを引きずる日本社会

 ――「人生の分散」とは、どういうことですか。

 これは解釈ですが、「昭和的な人生モデル」からの転換が求められているのではないでしょうか。

 たとえば高校や大学を出て、都市部の企業に正社員として入社し、定年まで勤める。男性は仕事で、女性は家庭。かつてはそんな人生が理想とされました。山登りにたとえると、集団で一本の道をのぼるような社会です。

 昭和に日本は「アズ・ナンバー・ワン」と呼ばれるほどの成長を達成したために、いまだに日本社会は古いモデルを引きずっているように見えます。でもそうした社会は人口が減少する時代には通用しないことは明らかです。

 これからは個人がそれぞれのやり方で、自分の人生をデザインし、好きな道を歩んでいけるような社会を目指すべきではないでしょうか。各自が創造性を発揮することが経済の活力にもつながることも、AIの予測は示していました。

 ――2017年のシミュレーションで、新型コロナウイルス 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9.html>の出現は予測できたのでしょうか。

 新型コロナ 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9.html>の出現そのものは予測できませんでした。当然ですが、データでの予測には限界があります。


    「ラプラスの魔」

 ――そもそも将来の出来事を知ることはできるのでしょうか。

 「ラプラスの魔」という議論があります。18世紀のフランス 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9.html>の天文学者で数学者のラプラスが唱えた命題です。全宇宙 
<http://www.asahi.com/special/rocket/contest2015/>のデータを手にいれることができれば、計算によって未来が予測できる、という仮説です。

 現代の物理学では、未来は確率論でしか知ることができないとされています。そもそもデータは無数にあり、把握するのは現実的ではありません。

 このように考えていくと、およそ人間が未来を予測するとはどういうことなのかという、深いテーマに行きつきます。

 ――人間は何のために未来を予測しようとするのでしょうか。

 生存を確保するため、未来を予測するのだと思います。地震など災害の予測も、同じことかもしれません。近似的な未来予測があれば、備えたり回避したりするのに役立ちます。

 ――具体的にはどんなケースですか。

 たとえば1972年、国際的な研究団体ローマ・クラブは「成長の限界」という報告書を発表しました。

 コンピューターを使った当時の最高の手法を用いたシミュレーションでした。地球の資源が限界に近づいているという予測は、現在の環境問題の先駆け的な内容です。

 その翌年に起きたのがオイルショックでした。「成長の限界」はオイルショックそのものを予測していたわけではありませんが、シミュレーションによって世界に警鐘を鳴らしていました。

 わたしたちのシミュレーションは、大きく言えば「成長の限界」のAI版です。2017年に公表したシミュレーションも、コロナが浮き彫りにした問題を、事前に提起していたのではないかと振り返っています。

 ――どんな問題でしょうか。

 新型コロナウイルスは、都市に集中する「密」な社会の脆弱(ぜいじゃく)性を明らかにしました。

 実はコロナ前のシミュレーションでも、集中か分散かという分岐は大きなポイントでした。格差を縮め、健康で幸福に暮らすには、都市集中型 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E9%9B%86%E4%B8%AD%E5%9E%8B.html>よりも地方分散型 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E5%88%86%E6%95%A3%E5%9E%8B.html>のほうが望ましいという結果が出ていました。

 ――コロナ禍のような不測の事態が再び起これば、今の予測は崩れてしまいませんか。

 その通りだと思います。でも予測から外れていくことにこそ、人間の本質があるとも考えています。既存の枠組みから外れていくところに、イノベーション 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3.html>やパラダイムシフトといったものがあるからです。


    「成長・拡大期」と「定常期」

 ――過去にはどんな転換がありましたか。

 わたしの持論ですが、人類史は人口が増える「成長・拡大期」と、増加が止まって一定に保たれる「定常期」のサイクルを繰り返してきたとみることができます。

 現在は3回目の「定常」の入り口にいますが、定常に移るときにはいつも、大きな価値観の変化がありました。

 ――どんな変化でしょうか。

 1回目は20万年前にホモサピエンスが生まれ、狩猟採集で人口が増えますが、やがて定常に移ります。

 そのときに「心のビッグバン」と呼ばれる、文化的な豊かさを志向するような価値観の変化があったと考えられています。洞窟壁画のようなアートや装飾品 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E8%A3%85%E9%A3%BE%E5%93%81.html>が、この時期から現れるようになります。

 ――2回目はどんな変化でしょうか。

 人類は約1万年前から農業を始め、再び人口増の時代を迎えます。

 定常に移るのは紀元前 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E7%B4%80%E5%85%83%E5%89%8D.html>5世紀ごろです。インドでは仏教が、中国では儒教や老荘思想が、地中海 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E5%9C%B0%E4%B8%AD%E6%B5%B7.html>ではギリシャ 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%A3.html>哲学が、中東ではユダヤ思想が広まった時期です。世界各地で普遍的な宗教や思想が育まれたこの時代を、ドイツ 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84.html>の哲学者ヤスパースは「枢軸の時代」と呼びました。

 実はこの時代、最近の環境史と呼ばれる分野の研究では、農業文明が限界にぶつかっていた時代だと考えられています。人口が大幅に増え、森林の枯渇や土壌の浸食といった、資源や環境の限界に直面していたという見方です。

 そうした状況で人は、資源の消費の拡大ではなく、文化を含む精神的な充足へ、発展の方向を切り替えていったのではないでしょうか。


    21世紀に価値観の転換

 ――3回目はどんな時代でしょうか。

 18世紀後半の産業革命以降、再び拡大の時代に入り、現在にいたります。21世紀に新たな価値観の転換が起きて、定常に移っていくというのが、わたしの見方です。

 ――なぜそう言えるのでしょうか。

 世界の人口は2050年ごろから頭打ちになると予測されています。人口が増えない以上、大量生産・大量消費を前提にしたこれまでのような成長は見込めません。

 日本では高齢者数が2040年ごろに、高齢化率は2060年ごろに、それぞれピークを迎えるとされています。

 成長どころか、医療や財政を維持できるのか。2050年ごろまでが、日本社会にとって正念場となることでしょう。「成長」から「成熟」へと舵(かじ)を切っていくほかないと思います。

 ――日本はいまだに昭和の成長志向から抜け出せていないと指摘されました。本当に変化できるでしょうか。

 学生など若い世代を見ていても、ここ10年ほど、社会貢献志向やローカル志向の高まりを感じています。

 世界を見ると、スウェーデン 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3.html>のグレタさんが、気候変動問題 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E6%B0%97%E5%80%99%E5%A4%89%E5%8B%95%E5%95%8F%E9%A1%8C.html>への注目を高めました。

 根底にあるのは「地球倫理」と呼べるような思想や意識ではないでしょうか。

 多様性を認め合い、自然や地球環境を大切にするような倫理が、世界の異なる地域で、宗教や世界観の違いを超えて、徐々に共有されつつあるように思います。

  ◇

 ひろい・よしのり 京都大こころの未来研究センター教授。専門は公共政策 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E5%85%AC%E5%85%B1%E6%94%BF%E7%AD%96.html>と科学哲学。AIを使ったシミュレーションは、日立京大ラボと日立コンサルティングとの共同研究。著書に「無と意識の人類史」「人口減少社会のデザイン」など。旧厚生省 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E5%8E%9A%E7%94%9F%E7%9C%81.html>、千葉大 
<https://www.asahi.com/topics/word/%E5%8D%83%E8%91%89%E5%A4%A7%E5%AD%A6.html>などを経て現職。1961年生まれ。 
-------------- next part --------------
HTML$B$NE:IU%U%!%$%k$rJ]4I$7$^$7$?(B...
URL: http://ml.memenet.or.jp/pipermail/svj/attachments/20220123/c285f543/attachment-0001.html 


SVJ メーリングリストの案内